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ドラマ「JIN」の結末と漫画「JIN」の結末

Posted : 2011/07/06

   アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。

   少し前になってしまいましたが、人気テレビドラマJINの完結編が終わりましたね。
   私は原作の漫画を読んでないし(先週末コミックを買って、今頃1巻から読み始めています…)、ドラマも途中参加でしたから、多くを語れる資格はないのですが、感動的で素晴らしい最終回だったと思います。しばらくはエンディングシーンと音楽が頭を離れませんでした。
   ハッピーエンドだったと思うのですが、単純明快なハッピーエンドではなかったですね。極めて矛盾した表現になりますが、非常に切なくて悲しいハッピーエンドでした。こういう複雑な感情を味わせてくれるドラマは限られていると思うので、途中からでも見てよかったです。何度かエンディングの録画を見直しましたが、仁が咲の手紙を朗読するシーンは毎回泣いてしまいますね。ほろ苦い切なさを噛み締めて涙しながらも、爽やかな気持ちで微笑むことができるような大人のドラマだなぁと思いました。

   ところで、テレビ版のJINは原作と結末が異なるそうですね。原作のように、江戸で仁と咲が結ばれることを望んでいたファンの中には、テレビ版の結末に納得がいかなかった人も多いようですが、他方ベタなハッピーエンドを回避して、150年越しのラブレターで二人の想いを結ぶエンディングは、原作以上に上質なまとめ方だったと絶賛されている視聴者もいました。この点、テレビ版の結末の方が優れていたかどうかは別にして、このように原作の結末を変えてしまって、ドラマとして放送することについて、原作者はどう考えているのでしょうか?法律上問題がないのか、気になった人もいるかもしれませんね。
   まずJINの原作者には著作権と並んで著作者人格権が認められます(著作権法第18条以下)。創出した著作物について、他の誰からも勝手に複製その他の使用をされない権利である著作権が、財産価値の保護に重点を置いていることに対して、著作者人格権は著作者の名誉や人格的利益を保護するものです。そして、この著作者人格権の中核をなすものとして、同一性保持権、すなわち他人に勝手に著作物の内容を書き換えられない権利が認められています(著作権法第20条1項)。したがって、著作者としては、ドラマとしての放送を許可するか否かだけでなく(著作権の行使)、原作との同一性の保持、すなわち結末の変更を認めるか否かについても許諾権限を持っています(著作者人格権の行使)。逆に言えば、著作者たる原作者には同一性保持権がありますから、テレビ版の脚本の結末が原作と異っていたということは、金銭の支払いなどを条件にして、事前に原作者の了解を得ていたのだろうと推測されるわけです。
   もっとも、きちんと著作者の了解を得ていなかったために、後日裁判などの紛争になったケースもあります。平成5年8月30日に東京地裁で下された「妻たちはガラスの靴を脱ぐ事件」は、その代表例で、あるテレビ局が原作者に無断で、「妻たちはガラスの靴を脱ぐ」という小説をドラマ化しただけではなく、後半の結末を原作とは全く変えて放送してしまったために、著作権侵害による50万円の使用料相当損害金に加えて、著作者人格権の侵害を理由とする100万円の慰謝料が認められました。この著作者人格権を巡る争いとしては、「宇宙戦艦ヤマト事件」やプレステなどで大ヒットしたゲームソフトの「ときめきメモリアル事件」も有名であり、結構トラブルになっているケースがあるのです(私は、司法修習生時代にときメモのユーザーでしたから、機会を改めてお話したいと思います)。

   ただ、単なる学術的観点だけではなく、営業ベースの商売的観点から考えると、JINに限らず、この原作との同一性の保持は悩ましい問題でもあります。例えば連続殺人事件の推理小説物などの映画化になると、最大の目玉である犯人を既に知っている原作の愛好者にも来場してもらうために、著作者の了解のもと、原作とは犯人を変えてしまうケースもあります。私は、「犬神家の一族」や「八つ墓村」で有名な推理小説作家の横溝正史先生のファンで、学生時代にかなりの作品を読んだのですが、横溝先生はその自叙伝的な作品である「真説金田一耕助」の中で、自分の小説と異なる犯人の構成がどのような作品になるのか、もう一つの作品を楽しみにしていたことを印されています。これは商売的観点からはやむを得ない選択だとしても、原作者にとって本音は複雑な心境なのかもしれませんが、それでも視聴者側からすれば、著作者が横溝先生のように寛大で、JINのように上質な脚本のもとでアナザーストーリーが生まれれば(私は、テレビ版のエンディング肯定派なので、この評価です)、同じ原作を二度楽しめる可能性もあるわけです。これはこれで面白いですよね。

   いずれにしても、JINを見て、改めて感じさせられたことは、どんなに時代が変わっても、人を思う心の尊さは変わらないことです。我々はそれを「仁」と呼ぶわけですが、医師と並んで、我々弁護士も深い「仁」の心が求められる仕事です。月並みですが、「仁」の大切さを再認識させてもらえた素晴らしいドラマに感謝したいと思います。




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