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未成年者誘拐罪の法定刑は適切か?【八日目の蝉】

Posted : 2011/05/19

アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。

 現在上映中の映画「八日目の蝉」を観てきました。
  ネタバレになるので、ここで詳細なストーリーの話はしません。一言だけ感想を述べておくと、この物語の母性愛のような、本能に近い人間の欲望を題材にして、これをとことん突き詰めて表現するとなると、意外に映像よりも活字の方が優れているのかなぁ…と感じました。

 さて、乳児の連れ去りからこの物語が始まることは、皆さんも広告などでご存知かと思います。これは、未成年者を従来の生活環境から離脱させて、自己の支配下に移す犯罪ですから、未成年者略取又は誘拐の罪に当たり、3ヶ月以上7年以下の懲役になります(刑法第224条)。「略取」より「誘拐」の方が有名でしょうが、法律上は、暴行や脅迫によるのが略取で、騙したりするのが誘拐ですから、「八日目の蝉」のケースは誘拐ではなくて、略取になります(略取と誘拐を合わせて、拐取罪と呼びます)。

 実はこの拐取罪には、未成年者拐取罪以外にも、営利目的等拐取罪や身代金目的拐取罪があります。前者は営利、猥褻、結婚、加害目的の誘拐等で、1年以上10年以下の懲役です(刑法第225条)。営利目的とは人身売買のようなイメージで結構かと思います。後者は身代金目的の誘拐等で、無期又は3年以上の懲役です(刑法第225条の2)。要するに、猥褻目的や身代金目的のような悪質な目的を持って誘拐するのと、かわいい赤ちゃんだな…と思って、ただ誘拐をするのとでは、罪の重さが全く異なるわけです。未成年者誘拐は、誘拐の罪の初級犯みたいなもので、悪質な目的を持っての誘拐に比べれば、違法性はかなり小さい…少なくとも刑法は、そう考えているし、私もそれが常識だと理解していました。
 …しかし、本当にそうなのでしょうか?悪質目的の誘拐と、ただの誘拐の線引きなど、本当にしてよいのでしょうか?
 「産みの親より、育ての親」という言葉がありますが、幼少期の育児過程を取り上げられた親子関係が、どれほど脆く危ういものに豹変してしまうか、この映画を観なくても、想像がついたはずですよね。誘拐に遭遇した関係者には、この筆舌に尽くし難い苦しみが、「ただの誘拐」で定型的に軽く扱われることについて、納得できるはずがありません。どうして、そんな当たり前のことに気付かないで、疑うことすらしなかったのだろうと思いました。専門家の常識が非常識なことは、よくあります。固定観念に捕われ過ぎることは、やはり危ないですね。




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