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万引き犯人の名誉?【まんだらけ警告文事件】

Posted : 2014/08/11

 玩具や漫画を販売する「まんだらけ」のホームページ上の警告文が話題になっています。
 この警告文は、万引き犯人に宛てたもので、平成26年8月12日までに、まんだらけの店舗で万引きした鉄人28号のフィギィアを返却しなければ、防犯カメラに写っている犯人の顔写真を公開するとして、盗品の返還を求めているものです。
 万引きが犯罪であり、許されないことは当然であるとしても、果たして、犯人に対して、このような手法で盗品の返還を迫ることは許されるのでしょうか?

 この場合、まんだらけの警告文及び顔写真の公開は、2つの犯罪に該当する可能性があります。
 1つ目は脅迫罪(刑法第222条)又は強要罪(刑法第223条)です。
 いわゆる盗品の盗み返しも窃盗罪で処罰され、日本では緊急避難的な例外(その瞬間に奪い返さないと、また盗品の所在が分からなくなる可能性が高いなど)を除いては、自力救済が禁止されていることは、ご存知の方も多いようです。これは、窃盗罪が財物の所有権だけでなく、社会の平穏な占有も保護する目的があるからで、いくら盗まれた自分の財物であっても、警察などを通さないで、誰でもこれを自由に盗み返してよいとなると、かえって世の中が混乱することが自力救済禁止の理由です。したがって、この理屈から考えて、財物の所有者が盗品の返還を求めて、犯人の顔写真の公開を警告することは、脅迫罪又は強要罪に当たる可能性が高いこともご理解いただけると思います。

 問題はこの警告に基づいて、顔写真を公開してしまった場合、2つ目の犯罪として、名誉棄損罪(刑法第230条)にも当たるかどうかです。
 ここで「名誉」と聞くと、万引き犯人に名誉も何もあったものではないんじゃないか…と不思議に思う方が多いと思います。しかし、名誉棄損罪における名誉の定義は、「人に対する社会一般の評価」とされています。社会生活上認められる価値なら、学問的なものから、身体的なもの、更には社交的なポジションや精神的な資質まで、かなり広範に認められます。さすがにネガティブな悪名までは含まれませんが、だからと言って、いわゆる名声や有名でポジティブな評価とは必ずしも限りませんから、日本語の「名誉」という言葉から抱く語感とは少し違うように思います。要するに、人として極めて平凡な普通の評価で良いのです。それを万引き犯人の暴露をして下げさせたのであれば、やはり「名誉」の棄損に当たります。
 但し、名誉棄損罪には、表現の自由の萎縮効果を防ぐために、名誉棄損の内容が真実である場合には、免責される特例があります(刑法第230条の2)。それでも、この特例は、目的の公益性など、それを暴露することの公共的な必要を要件としていて、その他の事実の暴露には厳しい傾向がありますから、この警告文に基づく顔写真の公開は、名誉棄損罪に該当してしまう可能性が高いように思います。
 もちろん犯罪を構成する行為が全て刑事裁判で処罰されるわけではなく、情状などの事情によって、起訴猶予などの寛大な処分になる可能性はありますが、万引き被害に遭ったまんだらけの方も犯罪として、処罰されるとしたら、ちょっと衝撃を受ける方もいるのではないでしょうか。

 まんだらけの警告文に対して、万引き犯人はどうするのか、仮に盗品が戻らない場合、本当に顔写真を公開するのか、その場合、警察は、まんだらけの犯罪容疑について、捜査開始するのか、諸々の興味は尽きないですが、やはり多くの方が万引き犯人の「名誉」と言われても、釈然としない疑問は残るかもしれません。
 この辺りの疑問は、犯罪者の人権重視が厚すぎると、最近批判があるところにも関係するのですが、時代とともに、どこでバランスを取るべきかは、なかなか難しい問題ですね。




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