全国発リーガルジャパン弁護士ブログ

  1. ホーム
  2. 全国発リーガルジャパン弁護士ブログ
  3. 検事たちはドラマ「HERO」をどう観ているのか?~検事の品格~

検事たちはドラマ「HERO」をどう観ているのか?~検事の品格~

Posted : 2014/07/21

 先週から、木村拓哉さん主演の「HERO」の続編が始まりました。

 HEROは2001年に平均視聴率30パーセント超えという奇跡的な数字を記録して大ヒットしたドラマで、その後もテレビ特番と映画にもなっています。
 ただ、木村拓哉さん演じる検事・久利生公平の脇を固める他の検事や検察事務官などの個性際立つ演技も魅力的だっただけに、配役を大幅に変更したことが心配されていましたが、初回は26.5パーセントという好発進だったようで、関係者も一安心だったと思います。

 私も初回放送を観ましたが、HEROらしいテンポの良さやコミカルさが残っていたことは勿論ですが、ドラマらしい演出をしながらも、我々実務家からみても、ストーリーの核心について共感が持てて、プロットの本質がしっかりしていることが本当に良かったと思いました。
 初回のプロットですと(以下、ネタバレがあります)、15年前の重大事件の犯人と疑われる被疑者が時効3日前に、偶然別件で逮捕されたために、マスコミや世論が大騒ぎで起訴を迫る中で、頑なに起訴をしなかった久利生がその理由を淡々と、しかし検事としての揺るぎない信念と強い誇りに基づいて、凛と語るシーンが印象的でした。
 法律の素人から、「判断するのはあんたら検事じゃなくて裁判官なんだから、時効になる前に、とりあえず起訴すれば良いのに…」と問い掛けられた久利生が「それは違うんですよ。起訴っていうのは、それだけでその人の人生を破滅させる危険がある恐ろしいものだから、僕らはその人が犯人に間違いないと確信できるまでは起訴しちゃいけないんです。犯罪の大小に関係なく、どんなときでも、とりあえず起訴する、なんてことは、あっちゃいけないんです。たとえ本当の犯人を逃がしてしまうことになっても、無実の人を起訴することだけは絶対にあっちゃいけない。それができるのは検事だけだし、それが僕ら検事の一番大事な仕事なんですよ。」
 概ねこういう独白でしたが、「検事の品格」がキラキラと輝いているような素晴らしいシーンだったと思います。

 その一方で、被疑者を起訴をしなかった久利生に対して、強烈なダメだしをしていた検察事務官から、「久利生さんは、始めから彼が無実だと見抜いていたのですね」と尋ねられると、「俺は何もシロとは言っていないよ。ただ、犯人かどうかがわからないって言ってるの」と答えたわけですが、この下りの久利生の台詞もとても素晴らしく、「さすが久利生さん!本当にそのとおり!」と私はテレビの前で、思わず合いの手を入れてしまいました。
 有罪か無罪かを決める刑事裁判ですが、本当に判断しているのは、「クロかシロか」ではなくて、「クロかクロとまでは言えないか」に過ぎないです。刑事裁判は厳密には無実を確認する場所ではないです。
 全知全能の神ではない人間には、分からないことがたくさんありますから、裁判で全てが判明するというのは仮想でしかなく、本当にそう思ってる関係者がいるなら、たぶんそれは思い上がりですね。
 我々裁判に関わる人間は、そのルールを肝に命じて、職務を全うすることが重要です。

 ドラマでは、結局のところ、それほど久利生が悩んで起訴を躊躇った被疑者が実は真犯人だったわけですが、私としては、結果的には本当は犯人だった被疑者の起訴について、久利生が悩み抜いたプロセスこそが秀逸に感じました。その被疑者がやっぱり無実だったというオチよりは、はるかに感じ入るものがありました。
 それこそが、検事の王道であり、「検事の品格」と言えるキモで、これを初回に持って来ながらも、説教臭くならないで、楽しく爽快なドラマに仕立てあげたのは、さすがHEROの面目躍如だなと思いました。

 ところで、前回のHEROの放送当時、私はリアルタイムでドラマを観ていなかったのですが、その頃同期の弁護士の勉強会に参加していた検事に勧められて、途中から観るようになりました。
 そのときの検事の話では、放送翌日は検察庁はHEROの話題一色で、ドラマを見ていないと全く会話についていけなかったらしいです。堅物のイメージがある検察庁の人々にも、ミーハーなところがあるようで、私は微笑ましく思ったことを覚えているのですが、こういうふうに「検事の品格」をかっこよく描いてくれたら、その業界に携わる人々として嬉しいのは、どの業界でも同じということでしょうね。

 長年の空白を経て、以前のヒット作を再度ブレイクさせるのはなかなか簡単なことではないですが、エンターテイメントを追求しながら、「検事の品格」の描写も怠らないHEROには、非常に好感が持てますから、これからの法曹界のためにも、HEROは是非ともヒットして欲しいです。
 今夜の第2話以降も注目ですね。




↓ブログランキングに参加しております。 よろしければクリックをお願いします。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士
へ
にほんブログ村   人気ブログランキングへ