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裁判所から届く特別送達とは恐ろしいものなのか?

Posted : 2011/04/08

  アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。

   先日、保証債務の支払いを請求されている女性のご相談を受けました。知人の社長に頼まれて、運転資金3000万円の保証人になったところ、その社長が夜逃げをしてしまい、代わりに彼女が訴えられたのです。
   年金暮らしの彼女にとって、そのような借金を背負うことになったのは当然苦痛だったのですが、彼女にストレスを与えたものがもう一つありました。彼女は、それを見る度に胸が苦しくなるとか、頭がズキズキして寝込みたくなるとストレスを表現していましたが、その正体が何かお分かりになるでしょうか?
   実は彼女を苦しめているものは、裁判所から送られてきた訴状…というか、それが詰められていた茶封筒なのです。その茶封筒が机の上にあるのを見るだけで、眠れなくなるそうです。これは、3000万円を支払う可能性が生じたストレスとは、また別のストレスだと理解して下さって結構です。これまで真面目に生活してきた彼女にとって、裁判所から届いた物々しい茶封筒は、すぐにピンと来ない大金の支払いと同じくらいストレスになっているのです。
   裁判で訴えられた経験のない方には分からないと思いますが、裁判所からの郵便は厳格な特別送達という方法によります(民事訴訟法第98条以下)。封筒に文字通り「特別送達」という赤字の記載があり、独特の重苦しい雰囲気を醸し出しています。しかも、普通の書留と異なり、誰がそれを受領したのかまで確認されるため、事情を知らない家族などはパニックに陥ることがあります。したがって、そんな茶封筒を見る度にショックを受けてしまうという方もいると思います。

   さらに、この訴状の特別送達が済んで裁判が始まると、当事者は準備書面という、お互いの主張を記載した書類を出し合いますが、特に相続や離婚などの家事事件ではお互いの罵り合いになることもあり、特別送達された茶封筒を見ることは耐えられても、自分のことがひどく書かれている相手方の準備書面を読んで、大きなストレスを感じる方もいらっしゃいます。ですから、私はこちらから裁判を起こすときには、裁判を続ける中でこれらのストレスがかかってくる可能性があることを特に丁寧に説明して、それでも裁判を起こすかどうか、よく考えて決めていただくようにしています。
   余談になりますが、職業とはいえ我々弁護士も、このような相手方の準備書面や相手方との交渉にストレスを感じるときがあります。弁護士も人間ですから。しかも、私の場合、弁護士になったばかりの若い頃よりも、キャリアが長くなった最近の方がそういう機会は増えたように思います。
   「弁護士業も長くなって慣れてくると、多少のことではストレスを感じないでしょう?」とおっしゃる方もいるのですが、全く反対なのは不思議ですよね。ただ、それには理由もあって、私の場合、弁護士になった頃は弁護士という職業を過剰に意識していたことが原因だと思います。その責任感を重く受け止めて、自分は弁護士になったんだから…と、強く意識していたわけですが、そうすると厳しい交渉場面などでも、プライベートな人間としての私ではなく、もう一人の弁護士としての私の方が遭遇したような感覚で、余りストレスを感じることはありませんでした。ちょっとした防衛的な二重人格ですね。私の友人の弁護士Aも、自宅を出た瞬間から弁護士Aを演じていなくては、いつも争いのど真ん中にいて身が持たないと言っていました。我々は依頼者の味方でありながら、客観的に紛争を分析することも不可欠ですから、これは弁護士として必要な技術かもしれません。
   ところが、私の場合、弁護士という職業に対するこの自意識過剰が年々薄くなってきたと思います。責任感は変わらないのですが、無理に演じなくても自然に弁護士ができているというか、プライベートの自分と弁護士の自分が自然に一致してきた感じです。まぁ、それだけ成熟したのかなとは思うのですが、その代わり厳しい交渉場面などに遭遇するのも一個の人格としての私なので、私も依頼者と同じように、多少のストレスは感じるわけですね。
   勿論、このようなストレスこそが依頼者の最大の悩みであり、それを受け止めるのが私の仕事ですから、覚悟はできていますが…。

   ところで、冒頭の依頼者の女性は、保証を求められた経緯に問題があり、保証否認と言って保証契約の有効性を争いながら、もしその反論が認められなければ借金を返せないので、同時に破産申立ても検討することになりました。
   彼女は、どうしたらいいのか、かなり思い詰めておられて、夜も眠れなかったと涙ぐまれていましたが、必ず解決するからという私の説明を聞いて、大分落ち着かれて元気になりました。今後は裁判所からの郵便も、全て我々弁護士が引き受けるから安心だと分かると(そもそも特別送達だというだけで、その郵便を過度に恐れる必要はないのですが)、もっと早く相談しておけばよかったと、最後は笑顔も見せて下さいました。このように言っていただける瞬間こそが、弁護士冥利に尽きるときです。それが力になって、我々もストレスを受け止めることができるわけですから、皆さんも余り悩まれないで、早めにご相談いただけたらいいなと思います。




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