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お城の復元は自由にできるのか?【大河ドラマ「江」】

Posted : 2011/04/07

  アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。

   今年はNHKの大河ドラマで、「江」を放送しています。
   私は、これまでに年間を通じて2つしか大河ドラマを見ていませんが、今回の「江」はその波瀾万丈の人生にとても興味があったので、続けて見ています。
   最近の放送で、江たち浅井三姉妹の母お市の方の再婚相手である柴田勝家が、賤ヶ岳の戦いで羽柴秀吉に敗れました。勝家は一旦、市や江たちが待つ北ノ庄城に戻りましたが、すぐに秀吉に攻め込まれて城は落城し、江たちは、勝家と共に城内に留まった市と死別する大きな節目となりました。
   そもそも江たちは、実父の浅井長政が叔父の織田信長に攻められたときに、小谷城の落城を経験しているため、悲劇が繰り返されたことになります。前回の父に続いて、今回母とも死別したわけで、戦国時代は非情だと改めて思いました。

   さて、このように落城した北ノ庄城は、現在記念公園などの史跡となっていますが、何故天守閣を復元しないのでしょうか?せっかく大河ドラマで取り上げてもらったのですから、早く復元して観光の目玉にしてもよさそうですが、何か法的な規制があるのでしょうか?
   この点、現代も往時を偲ばせる多くの城が存在し、観光客で賑わっていますが、その象徴はやはり天守閣です。しかし、日本の多くの城は実は明治6年の廃城令によって破壊され、さらに名古屋城や広島城なども空襲で焼失してしまったため、江戸時代以前から存在している天守閣は僅か12城しかないのです。世界遺産でもある姫路城や、松本城、松山城などで、「現存12天守」と呼ばれています。そこで地域振興の目的から、天守閣の復元が始まりましたが、自由に建築できるわけでもないのです。いかに地域振興のためとはいえ、天守閣も建造物になりますから、建築基準法や消防法などによる様々な規制を守らなくてはならないからです。木造建築物について、たとえば建築基準法施行令第41条は、主要部分の木材の品質として、節や腐れなどによる耐力上の欠点がないものを求めています。また、同第42条以下は、土台、基礎、はり、筋かいなどに制約を設けて、安全性を確保しています。さらに消防法第7条は、新築などについて、建築物の所在地などを管轄する消防長らの同意を必要としており、防火的観点からも厳しく規制されているのです。

   一方、これらの城の復元方法にはいくつかの分類があって、「木造復元天守」、「外観復元天守」などに分けられます。
   このうち、「木造復元天守」とは、文書記録などに基づき、当時使われていた材料や工法によって、忠実に天守閣を復元したものです。静岡県掛川城などがこれに当たりますが、先程の法的規制をクリアするのは容易ではなく、特例の許可などを用いて何とか建築できているのが現状です。したがって、多くの城は、「木造復元天守」以外の方法である「外観復元天守」などの方法によって復元されています。「外観復元天守」とは、鉄骨鉄筋コンクリートなどを用いながら、外観だけを往時のように再現したもので、最上階を展望施設にしたり、博物館のように歴史資料を展示しているものが多いです。結局、厳密な形で天守閣を復元すると、法令による耐震基準や防火基準を満たすことができないため、「木造復元天守」で復元できるだけの資料があっても、「外観復元天守」しか建てられないことが多く、このタイプとして最初に復元された名古屋城が代表例です。
   その他にも、大阪城のように、史料不足などから規模や意匠を推定して再建した「復興天守」も多く、法令的ハードルと資料的ハードルの両方をクリアしなければならない「木造復元天守」の建築がいかに難しいのかが分かります。
   今後の観光政策を考えるときに、法的規制の例外を緩やかに認めて、「木造復元天守」のようなリアリティのある天守閣を復元していくのか、安全性を優先して、「外観復元天守」に止めるのかは難しい判断でしょう。ただ、よく申し上げるとおり、法令の制定や運用は時代とともに生き物のように変化します。とすると、未曾有の大震災があった現状では、安全性を無視して、安易に「木造復元天守」を建築することはできないと思います。歴史ファンには残念かもしれないですが、もともと多数の観光客が集まることを予定している施設なだけに、防災的な担保は不可欠でしょうから。

   江などの歴史上の人物は、この現代の城の復元方法について、どう思っているのでしょうね。鉄骨鉄筋コンクリートの「外観復元天守」など、風情がなくてとても住めないと思っているのでしょうか。案外、北ノ庄城や小谷城が、そのような安全基準を満たした、より強固なものだったら、簡単には落城しなくて歴史は変わったかもしれないのに…と残念に思っているかもしれないですね。




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