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予測できないことは罪なのか

Posted : 2012/10/24

東京事務所の加藤です。
東京は朝晩が冷え込むようになってきて帰宅時は冬用のスーツを来ていても肌寒いくらいになってきました。
10月も下旬となり,そろそろコートの出番かと思いつつ,周りにコートを着ている人がいないためにコートを着る勇気が全く出ません。

さて,22日にイタリアで風変わりな裁判の判決がありました。
大地震の予知に失敗した地震学者等7名が過失致死を問われていた刑事事件で,
7名全員に罪が認められ禁固6年の実刑判決,加えて地震被害額1020万ドルを賠償すべきとの判断が下されました(ニュース)。

判決の理由は未だ開示されていないため,詳細は不明なのですが,
安全宣言を出し,大規模地震のリスクを伝えなかったことが過失とされたとの報道や
イタリア政府が民衆のパニックを抑えるために委員会の安全宣言が利用されたもので,政府のスケープゴートとされたとの報道があるようです。

地震の予知ができるのか否か,できなかったことが科学者の責任にあたるのか,という点に目が行きがちですが
大規模地震のリスクを伝えなかったという点には興味を引くところです。
いわゆる専門家が負う説明責任に近い議論で,
日本でも医者のインフォームドコンセントの議論は一時期盛んにされておりましたし,
私たち弁護士も依頼者に対する説明責任として,事件の見通しや取り得る手段,弁護士費用等に至るまで受任前に説明し,納得していただいた上でご依頼いただくべきとされております。
弁護士も医者も,一般の方にはなじみのない専門的分野でのアドバイスをさせていただく仕事なだけに,
最良の選択をしていただくためにも,必要な情報を提供し,ご説明差し上げることは非常に重要なプロセスと成ります。

もっとも,当然のことながら,イタリアの裁判での事例と私たちの業務上説明責任を負う事例とはかなり異なる部分があります。

イタリア裁判では国立災難予測対策委員会の委員である科学者らの説明が問題となっておりますが
私たちはあくまで(基本的には)私人であり公のための機関ではありません。

また,イタリアの科学者らは全国民に対して地震予測に対する見解を述べるのに対して
私たちは基本的には1対1の対応の中で,御相談者様のニーズに合わせたご説明が可能です。

そして,上記にもかかわりますが,イタリアの例で,大規模地震のリスクを公表することにより地震被害を回避できるかはかなり疑問ですが
私たちの業務ではご依頼者様に十分な説明をしていれば,無用な損害は抑えられることが多いですし,少なくともご自身の納得した手段で問題解決にあたることができることになります。

私たちの仕事で説明責任に懈怠があり結果としてご依頼者様に損害が生じた場合,
それは通常,説明されていれば違う手段を講じており,損害を避けられたということであれば
損害賠償等の問題に発展する可能性もあるものとなります。

この点についてイタリアの件はどうでしょうか。
大規模地震が発生する前,安全宣言ではなく,大規模地震の可能性があるので注意してください,と公表した場合,多くの人が回避措置をとるでしょう。
そして,最大の被災地とされるラクイアでは,大規模地震の危険が知らされると車で寝る習慣があるそうです。
しかし,今回の地震は安全宣言から6日後に起きたとされております。
大規模地震の可能性があるとはいえ,6日間も車中泊を続けられる人がどこまでいるでしょうか。

裁判の問題はまさにそこで,委員会として危険性を伝えていたとして損害をどれだけ避けれたのかというところは非常に難しい問題だと思います。
そこはおそらく,大衆心理の問題として一般論にしかならず,被害に遭われた方一人一人の行動を推測することは不可能でしょう。
イタリアの法制度,法体系がどうなっているのか,私には分かりませんが,日本で同様の裁判があったとしたら,
間違いなく(といってよいかと思います)この点で犯罪不成立となるでしょう。

このような状態で有罪判決の判断をした裁判所の判決の理由については
法制度が違うとはいえ,強い関心をひかれております。




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