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発達障害の被告人に求刑を上回る懲役刑

Posted : 2012/08/06

札幌の猪原健弘です。

1 先週,「姉殺害に求刑超え懲役20年判決 発達障害で「社会秩序のため」」というニュースが流れました。
 http://www.jiji.com/jc/zc?k=201207/2012073000900
 http://www.j-cast.com/2012/07/31141344.html
 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/dogai/391800.html
大阪市の自宅で当時46歳の姉を刺殺したとして、殺人罪に問われた被告人の裁判員裁判で、大阪地裁は30日、求刑の懲役16年を上 回る懲役20年の判決を言い渡した。判決理由で裁判長は、約30年間引きこもり状態だった被告の犯行に先天的な広汎性発達障害の一種、アスペルガー症候群の影響があったと認定。その上で「家族が同居を望んでいないため社会の受け皿がなく、再犯の可能性が心配される。許される限り刑務所に収容することが社会秩序の維持にも役立つ」と量刑理由を説明した。

 アスペルがー症候群とは,広い意味での自閉症(自閉症スペクトラム),発達障害の一種と言われており,生来的に,相手の感情や空気を読むのが苦手であり,そのためコミュニケーションを取るのが不得手,また特定の物事にこだわりがあるなどの特徴があると言われています。
 本判決では,「社会の受け皿がな(い)」点を理由の一つとして挙げていますが,後掲の社説にもあるとおり,現在は,地域生活定着支援センターが全都道府県に設置されており,行政と地域の民間が連携しながら,発達障害者に対しても対応する取り組みがなされています。福祉サービスを受けて地域で暮らしている発達障害者は多数います。
 「刑務所に収容することが社会秩序の維持にも役立つ」とも述べられていますが,日本の懲役刑では,その多くは刑期が経過する前に仮釈放などにより出所します。またそれまでの刑務所の中では発達障害の特性に合った矯正プログラムはほとんどないようです。そのため,いくら長期間刑務所に収容したとしても,再犯の恐れが減ることには直結しません。
 そもそも,報道情報によると,ご家族は検察側の精神鑑定により初めて息子が発達障害であることを知ったとのことであり,それまでの何十年もの間,不幸にも福祉や医療とも全く結びついていなかったことがうかがえます。本件では,責任能力は争われていないようですが,判決文に出てくる犯行動機から推測すると,発達障害のほかに精神障害は本当になかったのか。
 判決文では,「アスペルがー症候群という精神障害」と記載されていますが,アスペルガー症候群は,精神障害ではなく発達障害です。アスペルガー症候群のことを「障害」と言ったり「病気」と言ったりバラバラであり,正しい理解のもとに裁判官と裁判員が議論されたのか怪しいです。

2 先月7月の3連休の15日,「社団法人自閉症協会 第22回全国大会inほっかいどう」が札幌で開催され,初めて参加してきました。午前は福祉,午後は家族の分科会に参加しました。そこでは全国各地のみなさんのアイデアに基づき,様々な取り組みが発表されていました。
 とある人は,幼稚園を開園するそうです。幼稚園の年ごろから障害のある子もない子も身近に育つことによって,障害に対して正確な理解のもと育つことができ,誤った偏見などない人間として成長していけるのではないか,と。
 「自閉症」とは,その漢字から,自宅に「引きこもっている人」という誤解がありますが,全く異なります。広い意味での自閉症(自閉症スペクトラム)は,発達障害の一種であり,アスペルガー症候群も含まれます。発達障害の一種であるADHD(注意欠陥多動性障害),LD(学習障害)を併発する方も多いと多いと言われています。
 全国各地みなさん試行錯誤ですが,様々な実践が試みられています。

3 掲題の事件は,控訴されるのかどうか,詳細は不明ですが,地裁での裁判員裁判による判決に対して控訴がなされると,3人の裁判官だけで構成される控訴審(高等裁判所)で審理されます。求刑を大きく上回る懲役刑という点も裁判員裁判制度の是非との関係でも議論がなされるでしょう。
 この事件をきっかけに,発達障害とは何なのか,改めて考えるいい機会となることを願っています。私ももっと勉強してみます。
 
【社説】

http://mainichi.jp/opinion/news/20120801k0000m070114000c.html

http://www.asahi.com/paper/editorial20120804.html#Edit2

http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20120802_4.html




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