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カルテがない薬害C型肝炎訴訟

Posted : 2012/04/20

札幌事務所の猪原健弘です。

過去のブログでも少しだけ触れましたが,私は「カルテがない薬害C型肝炎訴訟北海道弁護団」に所属しています。先日4月17日,衆議院第2議員会館において,「カルテがない薬害C型肝炎訴訟」の院内集会があり,参加してきました。様々な政党の国会議員のみなさんも10数名参加してくださり,関心の大きさがうかがえました。原告のみなさんも全国各地から100名以上の方が参加してました。

そもそも薬害C型肝炎とは,特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤という止血剤が,出産や手術で出血した場合に投与されたことによって,C型肝炎に罹患させられたという薬害肝炎です。平成20年以前に各地から薬害C型肝炎訴訟(以下「先行訴訟」といいます。)が提起され,その結果,「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」(以下「特措法」といいます。)が議員立法により成立し,平成20年1月16日に施行されました。これにより,薬害C型肝炎患者全体の早期かつ一律の救済が約束されました。

しかしながら,薬害C型肝炎患者は1万人から25万人くらい(C型肝炎患者全体としては200万人くらいいると言われています。)と言われているにもかかわらず,その後,この特措法によって救済されたのはたったの1800名ほどです。

なぜこのような事態になっているのか。

特措法では,ざっくり言うと,①「当該止血剤を投与したこと」②「C型肝炎に罹患したこと」③「両者の因果関係」の3つの要件を,訴訟手続きの中で立証し裁判所に認定してもらうことを条件としました。このうち,被害者救済を阻んでいるのは①「当該止血剤を投与したこと」です。

カルテに止血剤を投与したよと明記され,そのカルテが残っていれば,立証は容易ですが,カルテの保存期間は5年間となっています(医師法24条参照)。かたやC型肝炎の発症は,投与の時期から数十年も後の話であり,判明したときには,すでにカルテが廃棄されていることがほとんどです。

特措法成立の際の付帯決議においては,カルテだけでなく,当時の医療関係者の証言なども考慮し,柔軟に投与の事実を認定していくこととされましたが,訴訟の中での立証のハードルは非常に高いままとなっています。患者さんが当時の病院に問い合わせたとしても,数十年も前の担当医はすでに亡くなっていたり,記憶がなかったり,そもそもこういった訴訟には極めて非協力的な姿勢であることが多く,患者さんは,C型肝炎感染により苦しめられることに加えて,再び苦しめられることに直面しています。

より長い期間苦しめられてきた患者さんほど,カルテはもとより,当時の医療関係者もいなくなっていることが多く,救済されないという事態に直面しています。「それはおかしい!」という患者さんの声から,この「カルテがない薬害C型肝炎訴訟」が東京,新潟,大阪,広島,熊本,鹿児島,北海道など全国から提起されるに至っています。

その後,医師や看護師から聞き取りを進めていくにつれて,そもそもカルテ(手術台帳,麻酔台帳など)には止血剤を投与したことを書かないことも多い,止血剤であるフィブリノゲン製剤は,フィブリン糊として皮膚の接着材代わりの利用されていたこともあり,その場合は薬品というより接着剤という認識のため,なおさら書かないことも多いということが判明してきました。

そもそも①「止血剤を投与したこと」という要件は,立証の難しさから,通常の公害訴訟や薬害訴訟では求められないような要件です。例えば,水俣病で言えば,「何十年も前に水銀入りの魚を食べたこと」を立証せよと言っているのと同じようなものです。議員立法だったので単なる不備なのか,特措法制定の関係者の思惑があったのかはわかりませんが,このままではほとんどの人が救済されないままとなってしまいます。

さらに,困ったことに,この特措法は5年間の時限立法であり,平成25年1月15日にその期限を迎えてしまいます。訴訟と並行して,延期も求めていく予定ですが,混乱中の政治情勢のため延期できるか未定です。

先日の17日の午後は,東京訴訟において,医師と看護師の証人尋問,その後夜の8時ころまで,全国弁護団会議でした。なんとかより多くの患者さんが救済されるよう,訴訟での立証活動をしていくとともに,この特措法の不備を立法へ働きかけるなど,あらゆる方面を駆使して,今後とも取り組んでいくつもりです。国会議員でさえ,薬害C型肝炎は特措法で解決済みであると誤解されている方も多くいるようですが,現状は全く持ってそうではありません。みなさんもぜひ関心を持ってニュースなどに注目していただけたらと思っております。




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