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『後見制度支援信託』という制度

Posted : 2012/03/29

札幌の塚谷です。今回は,『後見制度支援信託』という制度について。

「認知症の高齢者などの財産を守る後見制度で,後見人らによる財産の着服が判明したケースが昨年度,少なくとも184件あり,被害総額は18億円超に上ることが最高裁による初の調査でわかった」(読売新聞の平成23年10月20日の記事)

最高裁は,この問題に対処することを目的の一つとして,『後見制度支援信託』という制度を導入することとしました。札幌の家庭裁判所(以下,家裁)では,2月から導入開始となっています。

この制度は,財産管理のできない認知症等の高齢者について,①日常的な支払をするのに必要十分な金銭と,②それ以外の通常使用しない金銭,とに分けて,①については親族後見人(家裁が選任する)が管理し,②については信託銀行等に信託する,というものです。そして,例えば多額の臨時出費があり①では足りなくなった場合には,親族後見人が家裁に報告し,家裁が許可を出して②の中から交付されることになります。

すなわち,最低限の金銭のみを親族後見人の自由に委ね,後は家裁の監督の下に置くことで,親族による不正な財産管理を防止しようという制度です(従来の「成年後見制度」+信託契約)。

かかる制度について,様々な方面から意見がなされています。本人の自己決定の尊重にもとるのでは,信託とすることで財産が凍結され本人のために使われないおそれがあるのでは,等といった意見です。

私は,この後者の点は,特に重大な問題であると思います。

確かに,親族による財産の浪費を防止するためだけなら,この制度は有効です。ほとんどの財産は信託されるわけですから。しかし,親族後見人は,多くの場合推定相続人(現状のまま相続開始すると直ちに相続人となるはずの者)です。そのような推定相続人にとって,いずれ相続の対象となり得る,本人の財産は多い方が良いわけです。そうすると,必要となった出費をせずに,できる限り財産を手つかずで残す,という事態も,どうしても想定せざるを得ません。

それは果たして本人の権利擁護を図ることにつながるのでしょうか。本人の権利擁護を図ることには,本人にとって望ましい形で財産を利用することも含まれるはずです。単に本人の財産を浪費することだけが“親族による不正な財産管理”ではなく,本人にとって必要な出費をしないこともまた,“親族による不正な財産管理”であり,それでは本人の権利擁護は十分に果たされません。

以上のように,『後見制度支援信託』という制度が,本来目指すべき,本人(財産管理できない方)の権利擁護実現に資するものなのか,少し疑問が残ります。

本制度は,運用が始まったばかりです。新制度には,宿命的に修正がつきものです。この制度の持つ問題が,果たして良い方向に修正されていくのか,批判的に見守っていく必要があります。

 

 




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