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「ステキな金縛り」の中のステキな台詞

Posted : 2011/12/30

  リーガルジャパン代表弁護士の木下です。

  先日、三谷幸喜監督の映画「ステキな金縛り」を観てきました。私は、古畑任三郎シリーズや映画「THE有頂天ホテル」が大好きですから、かなりの三谷ファンです。そして、この映画が三谷監督の作品だということは勿論知っていたわけですが、後日パンフレットを見たら、三谷さんは監督だけでなく脚本に加えて、映画主題歌の作詞まで担当されていました。本当にマルチな才能の凄い方ですよね。
  映画の内容の方も、落武者の幽霊が法廷で真面目に証人として証言するというストーリーには、もともと職業柄興味がありましたが、例によってチョイ役も含めて豪華俳優のオンパレードで、有頂天ホテルのような派手さはないものの、笑いあり、感動ありの一流の娯楽映画だなぁと思いました。
 さて、弁護士的に真面目に「ステキな金縛り」を解説しますと、この映画で描写されているシーンは、現実の裁判ではほとんどあり得ないことばかりです。
 まず、幽霊の証人採用です。日本の裁判で証人を採用するかどうかは、全て裁判所が決定します。我々が打ち合わせをしていると、「近所の〇〇さん達に聞いてもらったら分かりますから、裁判所に呼んで下さい」とか、「友人の〇〇さんも××さんも見たことだから、裁判で聞いてもらって下さい」という話をされる機会がよくあるのですが、これらの人間全員を証人申請したとしても、実は裁判所は証人として全員を採用するとは限らないのです。裁判所としては、時間も無制限にかけられるわけではないですし、判決のための心証さえ取れれば十分なのですから、裁判所が必要だと考えた範囲でしか証人を認めないのです。「そんなのその証人を呼んで聞いてみないと分からないじゃないか!」と言ってみても仕方ありません。ここは、裁判所の専権で、裁判所にこの人とこの人にだけ聞けば、我々にはお見通しですから…と言われてしまうと、その範囲で認定したことが司法手続上は正しいことになるわけです。したがって、身元の特定が不十分な幽霊には証人の資質に疑いがありますから、裁判所によって証人として採用されることは極めて難しいと思います。
 また、仮に幽霊が証人に採用されたとしても、その審理が問題です。裁判官が幽霊を見たり、その声を聞くことができないため、イエスかノーで答える質問だけをして、これに対して、イエスなら1回、ノーなら2回音を出して、幽霊が答えるシーンがありました。…残念ながら、これも現実の裁判では難しいです。これは所謂「誘導尋問」と呼ばれる類いの質問で、実質的には質問者の方が先に回答を述べてしまっているので、厳密には証人の記憶に基づく証言かどうかの判別がつきにくくなります。そのため、証拠価値が著しく低くなったり、この類いの質問自体が中止させられてしまう可能性があるなど、かなりの制限があるのです。
 その他にも、裁判での証人尋問というものは、相当な計画性をもって準備しますから、幽霊が出廷できる夜になるまで何時間も休廷して待つとか、事前に証人申請すらしていない傍聴人を、即興で法廷に引き出して証人尋問するようなウルトラCはあり得ないです。先程の裁判所による証人採用でも述べましたが、裁判とは映画やドラマで描かれる以上に、かなり時間に厳格だと考えていただいてよいと思います。限られたスタッフが限られた時間の中でたくさんの事件を審理するために、相当にきっちり計画して詰め込んでいるわけです。また、即興で証人尋問されても、たとえ主尋問をする申請者側はよくても、反対尋問は困りますよね。相手側から、「そんなの聞いてないし、準備もしてないし、無理に決まってるじゃん。」という意見を確認して、その即興の証人申請は不採用で終わりになると思います。
 このように、素晴らしい娯楽映画に対して、実務的観点から非常に野暮な解説を加えて参りましたが、実は「ステキな金縛り」には、現実の実務的な感覚からしても、素晴らしくステキな台詞がありました。幽霊が出廷前にあの世に強制送還されかけたときに、中井貴一さん演じる検事が間に入って、深津絵里さん演じる弁護士を助けて、幽霊を証人として確保しました。弁護士にお礼を言われた検事は、何事もなかったかのように、こういう趣旨の台詞を言いました。「我々は法廷では敵味方ではあるが、真実発見という大きな観点からは仲間でもある。真実が知りたい自分にとっても、必要なことをしたまでだ。」と。中井貴一さん、めちゃくちゃカッコ良かったですが、これは本当にその通りだと思います。とかく弁護士と検事とは、争ってばかりというイメージの方も多いでしょうが、我々は正義や人権を担う専門家として、もっと大きな職責を担っているはずですよね。このような検事ばかりだと、大阪地検特捜部の証拠改竄事件は起こらなかったはずです。
 また、この映画では刑事裁判でしたが、私は、これは弁護士と弁護士の間の民事裁判にも、ある程度共通する感覚ではないかと思っています。決して、相手側と馴れ合うという意味ではないですが、弁護士には目の前の依頼者の利益を最大限に守りながらも、紛争を解決するために、どうしたら良いのかという大きな視点も必要です。そうでなければ、我々は代理人としての存在価値が乏しくなり、感情的になっている当事者の人数がただ増えただけで、ますます紛争が紛糾することになりますから。
 実務家のプロとしてカッコいい台詞が聞けた「ステキな金縛り」は、やっぱりステキな映画だったなと思います。




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