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娘の旦那の親族に財産が行かないようにしたいんですが…

Posted : 2011/10/11

司法書士の本多です。

 先日、こんな相談を受けました。

相談者Aさんは既に夫を亡くし先祖代々受け継いできた資産家の女性です。長女Bは癌で1か月前に急逝し、Bには配偶者Cと長女D(未成年者)が居ます(CはDの親権者)が、CはBが生前に離婚を考えていた程の浪費家です。

そこでAさんからの相談ですが、Aが死亡した場合、DはBを代襲し、財産はCには行かず一件落着、かと思いきや、将来的にDが相続する財産全部がCに渡る可能性があり、あるいはその前段階でDが相続した財産をCが食い潰す可能性があるのでなんとか出来ないか、というものです。このようなケースでは、どんなアドバイスをするのが良いのでしょうか?

Aさんにすると、血の繋がりが無いCのところへは、法律と言えど、これまで連綿と引き継いで来た財産をやりたくない、死んでも死に切れないといったところでしょう。

そこで、どうするか?

私は、現状を回避するには、Cの「財産管理に関する親権」を剥奪すると同時に未成年後見人を選任されてはどうですか、と回答しました。

上記アドバイスも間違いではありませんが、「ベストアンサー」だったかというと、プラスαの提案が出来ていたのではないかといった思いです。その後、これ以外にも利用できそうな制度を発見!した、というか、相談を受けた時点でアドバイス出来なかった反省を踏まえ、以下参考にしてもらえればと思います。

つまり、今回「信託」の提案が出来ればベターだったと思っています。民事信託の分野です。中でも遺言代用信託、信託の受益者連続という機能の活用です。

「信託」とは、委託者=甲と受託者=乙が信託契約を締結(信託目的を設定)し、信託財産を甲から乙に移転し、乙が名義人になります。そして、信託財産を乙が管理・処分し、一般的には受益者=丙に信託利益を給付する制度です。甲のメリットとしては、①財産の保護、②委託者死亡後の財産管理、③税負担(主に登録免許税)の軽減、④事業の承継等があり、乙のメリットは、①財産運用に係る責任の限定、②信託財産の隔離、③報酬・費用の請求等があり、丙のメリットとして、①収益の確保、②税負担の軽減等が挙げられます。

これを最初の事例に当てはめると、Aを委託者兼受益者とし、Aが死亡した場合は受益者をDとし、Dの死亡後は受益者をE(Cとは違うA側の親族)とする信託の定めが可能です。(信託法第91条)

遺言では、「Aが死亡すれば、財産をDに相続させる。Dの死亡後は、財産をEに遺贈する。」といった「後継ぎ遺贈」なるものは認められません。つまり、財産がDに移った時点でAの遺志を反映することに限界があります。その辺りをケースによっては、合法的に補完出来る制度が「信託」だと思います。 

「信託」は以前からあった制度で、信託業法及び信託法の改正が平成16年及び18年にされました。これまで「信託」といえば、いわゆる「商事信託」を指すことが多かったのですが、いわゆる「民事信託」についても、色んなバリエーションが用意されました。社団法人信託協会の統計によると、平成22年3月末の信託受託残高は平成14年3月末に比べ1.94倍になっているそうです。これは、商事信託を含むデータではありますが、法律改正後明らかにニーズは増えているとのことです。 

先日、「信託」に関する研修を受講しました。月1回、全8回の研修で来年の5月まで続きます。第1回目は公証人が講師になり研修をしてくださいました。大変、充実した研修で、残り7回も楽しみです(中には「マイケル・ジャクソンの遺言と信託VS日本の民事信託」といったタイトルの回もあり、楽しみです)。公証人の方が講義の中で信託制度の問題点として、「信託」に関する誤解が認知度を低くしている。「信託」といっても信託銀行がやってくれるものではありません。又、成年後見制度を利用する際には、同時に裁判所・公証役場の関与がありますが、「信託」制度利用時にはこれらの関与は不要で手続きが完了するところが利用し易い一方、悪用される可能性をはらんでいます。福祉型信託(契約)においては、税法上の恩典もありません。これらが、問題点として挙げられます。

とはいえ、悪い面ばかりではなく、現在、「相続、財産承継、親なき後の問題」を考えるときに、福祉型信託の利用が選択しとして挙がってない様に思います。私自身もそうでした。結果として、考えなくてもいいケースが多いのも事実ですが、前記問題を抱えたお客様との相談時に、専門家として老後の設計に的確な最善のアドバイスが出来ているかというと、そうとも言えません。これから、民事信託の中でも福祉型信託、とりわけ、成年後見制度との絡みが多いところを重点的に掘り下げ、対応出来るようにします。

「自分の老後や消費者被害に備えたい」「自分の死後の障害のある子や妻の生活に備えたい」「不動産や預貯金を保全・管理して、自分や妻子の生活費を確保したい」といったのが福祉型信託の典型的なニーズになるのでしょうか。

現在、信託業法上の「反復継続」し「業として」という規定により信託銀行・信託会社以外が受託者になる道は開かれていません。商事信託と比較し、少額な財産を対象とする民事信託の分野にこれらの業法上の受け手が参入してくる可能性は少ない状況です。その場合(民事信託の設計をする場合)、親族等が受託者にならざるを得ず受け皿整備が進んでいないと言われています。成年後見制度が施行し10年が経過しましたが、親族後見人の財産の使い込みが問題となっています。同様のことが親族受託者についても起こり得ます。そうなると社会問題化し、本来目指すところと違う方向に行く可能性があります。現行法上、「受託者監督人」の選任の他、「受益者代理人」の制度も用意されている為、我々専門家が受託者にならなくてもそれを補完する設計はあります。ただ、先述した公証人も「相談者から信託契約直前まで話が行くが、受託者の選定のところで断念される方が多いのも事実」と仰ってました。「受け皿不在の為、本来利用したい制度が利用できない」なんて、もったいないですね。法律の改正に時間が掛かるなら(ちなみに、国会の附帯決議には挙がっています)掛かるで何かの対応策を講じないと制度が利用されないまま時間だけ経過して行きます。福祉型信託は成年後見と同様、依頼者と長い間の関与になります。個人でお手伝いするのではなく、我々司法書士法人が受け皿になり受託者になれれば、少しは制度普及に貢献出来ると思っております。法人内での研修制度の構築等能力担保の部分で我々がしないといけないところは多いものの、折角出来た制度で、利用の仕方次第ではピッタリくるケースはこれから沢山あると思います。認知症高齢者が200万人超、知的障害者が50万人超、精神障害者が300万人超、身体障害者が350万人超おられるような状況下、これらの方々の生活や権利擁護に資することが出来ないか日々考えるところです。

「相続のことで相談したいんですが…」という方はおられても、「信託のことで相談したいんですが…」と相談に来られる方は居ません。

そんな時の為、もっと身近な制度による様、研鑽します。

司法書士法人A.I.グローバル

司法書士 本多正克

℡ 03-3234-1369




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